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鞍鼻あんび変形とは?美容鼻手術、斜鼻手術や骨折のトラブルについて

こんばんは。東京で美容外科をしている形成外科専門医の齋藤隆文です。

ここでは、鼻筋が凹んでしまう変形である鞍鼻(あんび)について解説しています。

生まれつき、鼻筋が凹んでいる人はもちろん、鼻のケガや鼻の手術を受けた後に鼻筋が凹んでいて気になっている方、ぜひ読んでください。

自分の鼻筋がなぜ凹んでいるのかが必ず理解できるようになっています。

さて、鞍鼻は、鼻の骨折後や、鼻詰まりのある曲がったお鼻、 いわゆる斜鼻(しゃび)・鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)のメイン治療である矯正手術後のリスクとして知られています。もちろん、うまくいけば合併症なく写真のようにきれいに仕上がります。

斜鼻 術後 正面

この手術、私の施設では、見た目に影響がある場合は形成外科が見た目の部分の治療を全て担当しているのですが、一般的には、耳鼻咽喉科で鼻詰まりの改善を目的に鼻中隔彎曲(びちゅうかくわんきょく)を治す機能重視の手術治療をされることが多いです。

形成外科の領域でも、斜鼻(しゃび)修正手術は鼻の手術の中でも最も難しいものの一つと考えられています。なので、この手術を日常的に行っている病院はとても少ないのが現状です。

もし、鼻の形も気にされている場合は、耳鼻咽喉科と形成外科の先生が協力して治療してくれた方が安全です。

なぜなら、この治療には、鼻筋が凹んでしまったり!鼻先が上がってしまったり!といった術後変形を起こしてしまうリスクが潜んでいるからです。

そしてこれは、実は美容外科目的の手術でも同じです。近年、鼻中隔延長手術(びちゅうかくえんちょうしゅじゅつ)をはじめとした、鼻の支持構造までも操作をするテクニックが広まっており、鼻中隔軟骨を採取するケースも増えています。

鼻中隔軟骨の採取にはいくつも注意点があるのですが、これを守っていないと、やはり同じように鞍鼻変形を起こしてしまうリスクが出てきます。

鼻の手術を検討されている全ての方、そして鞍鼻変形に悩んでいる全ての方に読んでいただきたい内容です。

目次

鼻筋が凹んでしまう鞍鼻(あんび)という鼻の変形

さて、斜鼻(しゃび)・鼻詰まりの原因として鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)があることは他の記事でも説明しましたが、これを治す手術では、鼻中隔軟骨の曲がった部分を切除します。

すると、お鼻の支柱になっている鼻中隔という軟骨を切除することになるので、適切に切除しないと支柱が弱くなってしまいます。

この場合、曲がったお鼻が治らないだけでなく、鼻筋が凹んでしまう鞍鼻(あんび)という鼻の変形を起こしてしまうリスクがあります。図のように支柱が弱くなってしまうと、鼻筋が凹むのはもちろん、このように鼻先を軽く押してみると、、、

鞍鼻変形 徒手検査 イメージ図
鞍鼻変形 徒手検査 イメージ写真

こんな感じで鼻先が潰れてしまいます。そして鼻の通りが悪くなっていることもあります。

鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)手術で形成外科が鼻中隔軟骨の補強を行うのは、鼻筋を真っ直ぐにするだけでなく、こういった合併症を起こさない予防としての意味合いもあるのです。

鞍鼻変形、と一言に言っても、実は細かく見ていくと下記のようなことが起きていることがわかります。

  1. 鼻筋の凹み
  2. 凹んでいる部分を中心として鼻筋が太くなる
  3. 鼻先が持ち上がる、豚鼻、短鼻になる

ですので、手術をすることでこれらが改善する方向を目指す、ということが言えます。

つまり、

  1. 鼻筋がまっすぐになる
  2. 太かった鼻筋のラインがすっきり細くなる
  3. 鼻先が高くなり、下に下がるため鼻の穴が見えにくくなる

このような改善効果を期待することができます。下の方に実際の術前術後写真を載せています。上記の3点について一つ一つ確認してみてください。それぞれがきちんと改善されていることがわかります。

手術により、元々の鼻筋を取り戻す

鞍鼻 術前後 横

この患者さんは、他院(私の施設の耳鼻科の先生ではないという意味だけです)で鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)の手術を受けて、術後に鼻筋が凹んでしまい、鼻の通りも悪化し、ご相談にいらっしゃいました。

M R Iをとると、鞍鼻(あんび)変形の原因が鼻中隔軟骨の切除部分であることがわかりました。

鼻の通りを良くしてあげようと曲がった部分をできるだけ切除するように医師側も努力するのですが、鼻の支柱が弱くなることとのバランス調整が難しい場合があります。必ずしもミスなのではなく、上手な外科医が丁寧に手術をしても、やはりこのリスクはゼロにはできないと思います。

ただ、こういった時に形を整える手術の準備までしておけば、ある程度ギリギリを攻めてたくさん切除しても、その部分を補強する術式を追加できます。

術前からそもそもリスクが高そうな場合や、変形が心配な場合はそこまで準備されている方が安全かもしれません。

なお、術後に変形が起きてからその修正を別でする場合には、初回手術で切除した鼻中隔軟骨が破棄されているので、体の別の部位から軟骨を採取してお鼻の形を作り直すことになります。

そういった意味でも、鞍鼻変形が起きてしまいそうなリスクが術前に高いと判断されるタイプの方は、最初から耳鼻科と形成外科が合同で手術を行うことで、初回手術で切除した軟骨を利用して変形が起こらないような処置をすることができます。

変形後の修正は、主に形成外科医が行います。採取に伴う皮膚の切開は、例えば女性の場合ですと、乳房の下の縁に沿って、あるいはその近くに、平均して15mm程度の傷を作ることになりますが、半年もすればほとんど目立たないくらい綺麗になります。

この方は、右胸から肋軟骨を採取して、新しく鼻中隔の骨組みを作り直しました。

ここは説明し出すとかなり複雑になりますが、弱くなってしまった鼻の支柱を新しく作ってあげるイメージです。

この患者さんの場合、形については、ハンプ(鼻筋の、凹みが出ている部分の少し上、小さな凸の部分)は残して、その下の鞍鼻変形の凹みをなくし、少しだけ鼻先をすっきりさせたいというご希望でしたので、できるだけそのご希望に沿って整えました。

鞍鼻 術前後 斜め 
鞍鼻 術前後 正面
鞍鼻 術前後 横
鞍鼻 術前後 あおり

難しい鼻の修正手術に関しては、執筆活動や学会報告もしています。

軽度のものを含めると、こういった術後変形は決して珍しくはありません。

が、依然としてこういった変形は医師の間でも十分に認識されているとは言い難く、また治療も極めて難しいものの一つとされています。

微力ながら学会発表や執筆活動でこういった治療が一般的になり、困っている人が治療を受けられるようになればと考えています。

私たちの外来にも、学会発表や耳鼻科の先生方向けの教科書で鞍鼻手術の章を担当させていただいたこともあり、がっつりと変形してしまった方はもちろん、たとえ軽度の変形でも、手直し依頼でご紹介いただいたりもしています。お気軽にご相談ください。

JOHNS 鞍鼻
*2018年に共著で鞍鼻について執筆させていただいています JOHNS 〈Vol.34 No.9(201〉 特集:私はこうしている―鼻科手術編

鞍鼻についての学会発表については、このブログの一番最後に内容の要約をまとめています。

手術の前に大事にしていること

お顔の左右差、全体のバランスを一緒にお写真で見ながら、患者さんとその方の自覚している”曲がっている”を共有できるように努力しています。

曲がりを修正していく中で鼻の高さや長さについてももちろん変化が起きるので、ご自身が認識されているお顔の特徴・コンプレックスを確認して、手術による変化でそれらが悪い方向にいかないかを確認します。

こういったことを確認するツールとして強力な武器となるのが、写真を使ったシミュレーションです。

写真を手術に沿って修正していきながら、術後の形のイメージを事前に共有しておくことで、患者さんにも手術による変化に対する心の準備をしてもらうようにしています。

ご注意いただきたいこと
  • 患者さんの個人情報の保護のため、ご本人とのお話の内容は一部変えています。あくまで、一般的な治療の流れを理解していただくための、イメージだと考えてください。
  • 治療の効果には個人差があります。主治医から十分な説明を受け、リスクや副作用についても納得してから手術を受けましょう。

治療についてのご相談や受診のお問い合わせについては、当HPトップページの予約フォームからご連絡ください。

今回の治療内容について

施術内容:変形外鼻手術

鼻の手術のリスク:術後出血、感染、傷が開く、曲がりや変形の残存、鼻閉の残存、後戻り、など

費用:見た目に対する自費手術の場合 約90〜120万円

この方は、保険治療で、手術にかかる費用は高額療養費制度の対象となりました。

費用は約5〜26万円が目安となりますが、詳しくは厚生労働省のH Pをご参照ください。これ以外に、入院日数により入院費用がかかることがあります。

齋藤隆文医師には下記の医療機関で受診できます。HPトップページからご予約ください。
  • 聖路加国際病院 形成外科  毎週金曜日 初診外来 予約制
  • 加藤クリニック麻布 美容外科 毎週月曜日水曜日土曜日 初診外来 予約制
  • *HPトップページに予約可能なお日にちとクリニックのカレンダーを掲載しています

第62回 日本形成外科学会総会・学術集会

一般口演 演者 齋藤隆文

タイトル:自己免疫疾患による鞍鼻変形に対する、当科のアプローチ

抄録しょうろく(内容の要約になります)

目的

様々な原因により引き起こされる鞍鼻変形(あんびへんけい)において、特に自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)を原因とする症例に焦点を当てて、現在の当科の鞍鼻修正アプローチを報告する。

方法

2017年4月~2018年11月にかけて、7例の鞍鼻変形患者に対して変形外鼻手術を施行した。自己免疫疾患の内訳は、再発性多発軟骨炎、wegener肉芽腫(にくげしゅ)、悪性関節リウマチであった。診察及び頭部MRI・CT検査を施行し、鞍鼻の重症度を以下のように分類した。①鼻中隔軟骨の支持性がほとんど保たれている症例に対する、陥凹部へのonlay graftによるcontourの修正、②中隔軟骨の支持性は残存するが明らかに低下している中等症例に対する、spreader graftなどによる中隔軟骨の補強、③中隔軟骨の支持性が残っておらず、その補強のみでは修正が困難と思われる重症例に対する、肋軟骨による鼻背L-strut再建、をそれぞれの症例に施行した。

結果

いずれの症例においても血腫、感染、明らかな左右差などの有意な合併症を認めず良好に経過した。また、術後半年以上が経った時点で外鼻のMRI検査を施行し、移植物の良好な生着を確認した。

考察

鞍鼻の診断は容易だが、術式決定に当たってはその病態を正しく理解して、解剖学的にどの部分の再建が必要なのかを判断することが不可欠となる。鼻背部の中間円蓋(えんがい)が陥没している解剖学的な原因は、鼻中隔による中間円蓋の支持性の低下である。鼻中隔は外鼻の重要な基礎構造であり、鼻中隔軟骨、篩骨垂直板、鋤骨(じょこつ)などから構成されており、鼻腔を左右に分割している。鼻中隔は鼻背の鼻尖側において、上外側鼻軟骨upper lateral cartilage(以下ULC)を支持している。このため鞍鼻治療におけるポイントは、この鼻中隔軟骨の支持性の損傷程度を正確に診断し、適切な術式を選択することにあると言える。

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この記事を書いた人

さいとう 隆文のアバター さいとう 隆文 美容外科医

齋藤隆文 さいとうたかふみ
日本形成外科学会認定専門医
神戸大学医学部医学科 卒
聖路加国際病院形成外科美容外科、加藤クリニック麻布、タウン形成外科クリニックに所属。
専門はお顔の美容外科、特にお鼻の治療。

コメント

コメント一覧 (1件)

  • 現在73歳です。この内容文章を読んで、私は鞍鼻と確信しました。高校1年の時鼻中隔湾曲症の手術を受け、鼻の柱を多く削り取ったのか、重みで鼻の柱が少し陥没し、曲がっているように感じます。鼻呼吸が少し苦しくおかげで良く眠れません、数年前に近くの耳鼻科へ行きMRI(レントゲン)?取ってもらいましたが、真っ直ぐに削っているの
    いじる必要が無い、触るなら柱以外の周りだといわれ、陥没で曲がっている事は言われませんでした。納得がいかず
    それで終わっています。東京在中なら一度見ていただきたいと思うのですが、大阪府豊中市なので考えてしまいます。耳鼻咽喉科と形成外科が一緒になった、総合病院で斎藤先生のような詳しい先生がいる病院先生が関西でいれば
    お教え願いましたら、大変助かります(厚かましいお願い)気楽に東京に出ればそれに越したこのはないのですが、家内は足が悪いので、躊躇します。

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