こんばんは。東京で美容外科をしている形成外科専門医の齋藤隆文です。
お鼻の整形手術を受けたいと思ったら、まずはググってみて、人によってはSNSなどで解説動画もチェックして、
だいたいわかったぞ!よし、クリニックに相談にいってみよう!
ということで、クリニックにご相談にいらっしゃる流れが一般的だと思います。こういった流れで患者さんが私の外来にいらっしゃったときによく聞かれるのが、
先生!なんかインスタ見てたら、胸の軟骨でお鼻の整形しました!みたいなの出てきて、怖すぎるんですけど私も肋軟骨ろくなんこつっていうやつ必要ですか?
みたいな、なんでお鼻の整形なのに胸の軟骨が必要なのよ、といったご質問です。
あとは、そういった解説動画を一通りチェックした方は、胸から軟骨をとるということで、費用やデメリット、傷跡きずあとについて詳しく知りたい、という方もいらっしゃいます。
この記事では、ずばりお鼻の整形手術についての一般的な事項、メリット・デメリット、リスク、費用、ダウンタイム、傷跡などについて全てを解説していきたいと思います。
特にご質問が多い内容については、
- デメリットは鼻先が固くなる、胸に小さな傷跡が残る、など。
- 費用はクリニックによってバラバラ。100万円〜高額なクリニックでは300万円近くなることも。
- ダウンタイムは外側にギプス固定をするのが約1週間。固定が外れれば大きな腫れは落ち着いている。
- 胸の傷跡は約13ミリ〜17ミリ程度が一般的。ご希望に応じて下着に隠れる位置での切開が可能。
といったところですが、それぞれについてもう少し詳しく解説していきます。最後に、肋軟骨を使ったお鼻の手術によりどれくらいの変化を出していくことができるのか、実際の症例写真をお示ししています。
カタチを大きく変える、長期的安定性を求める、修正手術、ならば肋軟骨!
そもそも、なぜお鼻の手術に肋軟骨ろくなんこつが必要なのでしょうか?
お鼻の手術をするにあたっては、お鼻の脂肪をとったり軟骨を糸で縫い合わせてカタチを変えるような手術だけで印象をしっかり変えられるケースはあまり多くありません。
特に、お鼻が低かったり、丸かったり、皮膚が固かったりする場合は、しっかりした変化でお鼻のバランスを整えようと思うと、お鼻以外の部分から軟骨なんこつを採取してお鼻の手術に利用する必要が出てきます。
体の中で、しっかりとしたボリュームの軟骨を採取できる部位は限られています。特に、お鼻の手術に適した軟骨をとってくる候補となる部位は、耳、あるいは胸ということになってきます。
耳の軟骨は柔らかくて、鼻先の軟骨と質感も似ているためとても有用な手術材料の一つです。日本でも鼻手術において最もよく使われる軟骨となっています。
しかしながら、鼻先を大きく前に出したり下に下げるような必要がある場合には、軟骨が柔らかいため十分な変化を出すことが難しくなる場合が多いです。
ここで注意していただきたいことがあります。
気をつけなければならないのは、手術後数ヶ月の間は糸の力で、ある程度カタチが保持されている可能性があるということです。
SNSなどで、
手術直後のお写真です!
耳の軟骨で、お鼻先を6ミリ高くできました!
といったお写真を目にしたことがありますが、これはさすがにカタチを長期的にはキープできないプランと言わざるをえません。
おそらく長くとも、術後数ヶ月のうちには高さがなくなっていき、ひどいとほとんど術前と変わらないカタチになっているかもしれません。
私は海外留学中にお鼻の修正手術についての研究をしており、高難度の修正手術において、耳あるいは鼻中隔軟骨のみを用いた場合に長期的に維持できる変化量を超高精度3Dカメラでデータ解析した経験があります。
100名近い患者さんの術後半年時点での高さの変化量の平均は約2ミリという結果が出ました。ちなみにこの論文は、アメリカ形成外科・美容外科学会公式雑誌に評価され、掲載されることになっています。
こういった事実から、耳の軟骨での鼻先を下げながら前に出していく変化量は、長期的な安定性を考えると3ミリ程度が限界かなと考えてプランニングしています。
これに加えて、皮膚が固かったり、修正手術の場合には、耳の軟骨だけで大きな変化を出すことは難易度が極めて高くなってきます。
こういった点においては、肋軟骨ろくなんこつがとても強力な武器となってきます。しっかりとした固さがあり、まっすぐで安定した板としての材料を確保することができます。
また、こうした安定した材料でしっかりした土台作りから行うことで、大きな変化でも長期的に安定したお鼻に仕上げていくことが可能となります。
こちらは、お胸のCT検査データを特殊な技術で3D画像に作り直したものです。白く見えているのが骨で、これは理科室のガイコツの模型の胸の部分で見たことがあるという方も多いかもしれません。
そして濃い赤色の部分が肋軟骨です。このうち、女性の場合だと乳房の下縁あたりにある部分を採取してきます。
私は手術前にこのように画像を作成し肋軟骨のサイズ、位置、カタチを確認しておき、できるだけ小さな切開から安全に、必要な量の軟骨を確実に採取するようにしています。
また、この軟骨は、人によっては石灰化といって骨のように固くなってしまっている方がいるため、CT検査で事前に軟骨が正常な状態であるかを確認する場合がありますが、これなら一目瞭然ですね。
ちなみに、肋軟骨はすぐ裏に肺があり、間違った位置で切ると肺に穴をあけるリスクがあります。私はこのリスクを限りなくゼロにするために、肺が下にいない位置、損傷しない位置を選ぶようにしています。
肋軟骨の傷跡、ダウンタイム、デメリット、費用
さて、ここでは、よくご質問いただく内容について一つずつ解説してみたいと思います。
傷跡について
肋軟骨を採取するのは原則として右胸からになります。女性の場合は、右の乳房の下のライン、いわゆるシタチチのラインに合わせて切開をデザインすることもあります。
切開は採取する部位、サイズ、体型によって傷跡の長さも変わってきますが、だいたい13〜17ミリの切開になることが多いかと思います。
胸にキズが残るなんて不安!
温泉とか水着のときに聞かれたらどーしたいいの?!
というご不安がよぎった方もいらっしゃるかもしれません。そういった方には、乳房の下のラインに沿った切開が可能な場合はそのデザインを優先して採用しています。また、それが難しい場合には、
胸に1センチ位のホクロがあったから、手術でとってもらったんだよね、と答えるようにするのはどーですか?
といった感じで、その方の状況に応じて、患者さんと一緒に手術以外のことについてもご相談するようにしています。
ダウンタイムについて
ダウンタイムについては、お鼻のことと、お胸のことが気になるかと思います。お鼻については、肋軟骨を使ったからといって特別なことが起こるわけではありません。
ただし、肋軟骨を使って出す変化のデザインの場合には、術後数日間の鼻の穴のパッキング、そして術後1週間程度はギプス固定をすることが多いです。
ギプスを外せば、大きな腫れはたいてい引いていますので、ギプスをしている間は人に合うのを避けていた方も、翌日からは通常通り外出されることが多いかと思います。
胸については、痛みが術後数日間強めにでることがあります。最近は、軟骨周囲の筋肉を損傷させないように採取する技術が進歩しているため、痛み止めを飲んでいれば翌日から日常生活を問題なく送れる方が多いです。
しかしながら、運動習慣があり筋肉が発達している方は、術後の痛みが少し出やすい傾向にあります。長い方で2〜3週間痛みが気になる可能性がありますので、事前に担当医とリスクについてご相談ください。
その他デメリットについて
肋軟骨ろくなんこつはしっかりとした固さとまっすぐな材料として採取できる強力なメリットがあり、大きな変化を出したい場合の長期的な安定性という点において優れた軟骨であるといえます。
しかしながら、いくつかの点で、耳の軟骨に劣るポイントがあります。
1つ目は、胸に傷跡きずあとが残ることです。そこまで長いキズではなく、またきれいに縫合してもらうことで目立つような傷跡にはなりませんが、傷跡がなくなるわけではありませんので注意が必要です。
2つ目は、作ったお鼻先が固くなることです。元々お鼻の尖端せんたんは柔らかく、指で動かすとグニャグニャとよく動きますよね。この部分を高くして固定するため、どうしても術後の鼻先は動きが乏しくなります。
- 耳の軟骨で作ったお鼻はよく動くが大きなカタチの変化を出すのは難しく、後戻りしやすい
- 胸の軟骨で作ったお鼻は大きな変化で後戻りもしにくいが、鼻先の動きが乏しくなる
ということが言えるかと思います。
費用について
これについては、クリニックによってバラバラです。
2022年2月時点での相場観としては、肋軟骨を使った鼻整形の場合は、クリニックによってはモニター制度などを利用できるケースで100万円前後、そうでなければ150〜200万円くらいが多いかと思います。
とはいえ、あくまで私のお付き合いのあるドクターとお話をしている中でのあくまで感覚的な金額ですので、参考程度にとどめてください。
お鼻の手術に限らず、美容整形にもだいたいの相場料金というものが存在します。
まだ若くて経験が少なかったり、他のクリニックより優れているという自信がない場合には、相場料金の一番低い金額になることが多いです。これは業界を問わず同じようなことが言えると思います。
また、豊富な経験と圧倒的な仕上がりをもって、予約がとれないほどの有名ドクターであれば相場料金の上限を超えていると感じるような高い金額でご提案しているドクターもいるかもしれません。
私には、鼻整形を専門とするドクターとして、心から尊敬できる素晴らしいメンター、お師匠さん、外科医としての先輩が何名かいらっしゃいます。
そのいずれのドクターも、ある程度相場の真ん中から少し上くらいの料金で設定なさっているケースが多い印象です。いちドクターとして選ぶ側に立って考えてみると、安すぎても高すぎてもリスクがあると感じています。
肋軟骨を使ったお鼻の手術の実際のお写真をみる
早速ですが、術前後のお写真です。
この方は、お鼻の手術は全くの未経験でご相談にいらっしゃいました。お鼻の手術はとにかく初回が大事です。初回であればデザインの自由度も高く、修正手術に比べて理想のお鼻のカタチに近づけやすい状態です。
お顔全体のバランスを見ながら、お顔全体の印象がよくなる、いわゆる“お顔がよくなる”デザインをご希望され、完全に私にプランを任せていただいたケースです。
術前の横顔のバランスから、写真を使ったシミュレーションをしながらお顔に合いそうなデザインをご提案しました。
少しおでこにもボリュームを足した上で、肋軟骨を使ったお鼻の手術プランで手術を行いました。お写真は、術後1ヶ月時点でのものです。
お鼻のしっかりした変化の出る治療をご希望の場合であっても、究極的な目的は、“お顔をよくする”ということだと思います。その治療でお顔の印象がさらに改善するのか、という視点でご提案するように心がけています。
まとめ
肋軟骨ろくなんこつを使ったお鼻の手術について、よくいただくご質問や実際の症例写真を交えながら解説いたしました。
メリットだけでなく、肋軟骨を使う上でのデメリットについても一般的な知識をしっかりと知っていただけたかと思います。
特に、メリットだけを並べられていいイメージだけで治療を決めてしまうのには大きなリスクが伴うと感じています。必ずデメリットについても、しっかりと理解した上で治療をご検討ください。
また、費用についても、相場料金だけでなく、どのように費用を考えるかについても個人的な考えを書かせていただきました。あくまで個人的な意見ではありますが、ご参考にしていただければ嬉しく思います。
施術内容:
鼻 骨切幅寄せ、鼻中隔延長術、鼻尖形成術、肋軟骨採取、耳介軟骨採取、
前額 ヒアルロン酸注入
まぶた 眉毛下皮膚切除術、表ハムラ法+涙袋形成
手術費用:上記の合計 220万円 *モニター料金となっています
リスク:術後出血、感染、キズが開く、曲がりや変形の残存、後戻り、左右差、傷跡、違和感、など
- 聖路加国際病院 形成外科 毎週金曜日 初診外来 予約制
- 加藤クリニック麻布 美容外科 月曜日水曜日土曜日 初診外来 予約制
*HPトップページに予約可能なお日にちとクリニックのカレンダーを掲載しています
- 患者さんの個人情報の保護のため、ご本人とのお話の内容は一部変えています。あくまで、一般的な治療の流れを理解していただくための、イメージだと考えてください。
- 治療の効果には個人差があります。主治医から十分な説明を受け、リスクや副作用についても納得してから手術を受けましょう。
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