こんばんは。東京で美容外科をしている形成外科専門医の齋藤隆文です。
鼻をすっきり整えたい!思い立ったが吉日きちじつ、まずは情報収集。
鼻の整形手術についてググったり、instgramなどのSNSで検索をかけると様々な手術方法が次から次にあがってきます。手術の良い面ばかりが魅力的な言葉とともに並べられて、読んでいるうちにイメージもどんどん膨らんでいきます。
ですが、どれだけ情報を集めても、結局一番知りたい疑問に対しての明確な答えは返ってきません、、そうです、この疑問。
その術式、この鼻にやってもうまくいくんですか?
結局は、自分に合った術式を知るには経験のあるドクターの診察を受けてみるのが一番です。そのためにも、カウンセリングの前に、そのドクターの考え方や説明をなんとなくチェックしておくことが大事です。
説明は丁寧か、わかりやすい言葉で自分でも理解できるような内容か、利点だけではなく、欠点やリスクについてもきちんと教えてくれているか。
このあたりを参考にしながら、信頼できそうなドクターに絞ってカウンセリングを受けてください。
今回の記事では、耳の軟骨なんこつを使った鼻の手術について解説します。特に、肋軟骨ろくなんこつやシリコンプロテーゼは使いたくない、という方はぜひ参考にしていただけたらと思います。
セルフチェックでわかる、耳の軟骨を使って鼻の手術をするのが向いている方の条件は以下の3つです。
- 鼻筋を高くする手術(いわゆる隆鼻りゅうび術)が必要ないか、1〜2ミリだけで十分な場合
- 鼻の中の軟骨(鼻中隔軟骨びちゅうかくなんこつ)が鼻の穴の近くに触れる場合
- 鼻先を触った時に、皮膚の下にある軟骨の形が自分ではっきりと分かる場合
上記のどれかに当てはまる場合は、耳の軟骨で鼻の形をきれいにできる可能性が高いです。3つについて解説したあと、実際に耳の軟骨だけで形を整えた実際のケースをご紹介したいと思います。
耳の軟骨や耳の裏の筋膜きんまくでも鼻筋を高くすることは可能です
最初に、鼻筋の治療についてです。
というのも、耳の軟骨なんこつは鼻筋を高くする目的ではあまり使われません。それは、耳の軟骨は三次元的に複雑な形をしているため、スーッとすっきり通った鼻筋を耳の軟骨で作るのにはあまり向いていないとされているためです。
ただ、私はそれよりも、もっと大事な点が理由で、鼻筋には耳の軟骨を使わないようにしています。それは、耳の軟骨には量が限られているという点です。
耳の軟骨は鼻先の形を整えたり高くしたりするのにすごく使いやすいため、基本的には鼻尖形成のために使ってあげたほうが鼻の全体の形を整えるのにはメリットが大きいです。
また、耳のきれいな形を崩さないようにするためには、耳のフレームとなっている部分の軟骨は確実に残してあげる必要があります。耳のそれぞれの部位で残さなければいけないパーツというのがありますので、注意が必要です。
あとは、最近のトラブルでよくお聞きするのが、ピアスなどでよく使われているトラガス部分の軟骨に関するものです。トラガスは耳の穴の前半分を担当している軟骨で、耳の穴の形をキープするのにとても重要な役割を果たしています。
経験の少ない先生ほど、鼻の手術のときにトラガス部分の軟骨を使う傾向にあるようです。この軟骨を取られすぎてしまったことで、術後にイヤホンが入らなくなった、といったトラブルを何度も相談されていますので、気をつけてくださいね。
鼻筋のちょっとした凹凸を整えたりする場合には耳軟骨が良い場合もあります。あとは、少しだけ鼻筋を高くしたい、という程度の場合には、耳の軟骨を採取する場合に一緒に筋膜もとることが可能です。
この膜を鼻筋にきれいに入れてあげることで、1〜2ミリ程度であれば鼻筋を高くすることが可能です。いろいろな引き出しを持っているドクターに相談すると、自分に合った治療アイデアをもらえるかもしれません。
鼻中隔延長術びちゅうかくえんちょうじゅつを考える前に、鼻中隔軟骨に触れてみましょう
鼻先の変化をしっかり出すのに最も効果的と思われるのは、鼻中隔延長術という術式です。この術式がベースとなって、様々な鼻先の形を作っているというベテランドクターはたくさんいます。
鼻の手術についてまだ調べ始めたばかりの方のために、鼻中隔延長手術について簡単に説明したいと思います。
ご存知のように、人間のお鼻は左右の鼻の穴があり、真ん中に左右の鼻の穴を分けるための壁があります。この壁を作ってくれている軟骨が、鼻中隔軟骨です。
この図でいうと、オレンジ色の部分が鼻中隔軟骨に当たります。この部分が曲がっていると鼻の通りが悪くなってしまうため、鼻中隔湾曲症びちゅうかくわんきょくしょうという言葉を聞いたことがある人もいらっしゃるかもしれません。
このオレンジ部分の軟骨に、他の体の部分から持ってきた別の軟骨を鼻先を出したい方向に移植いしょくすることで、鼻先の皮膚が押し上げられるようにして鼻先が高くなります。
ここで大事なポイントがあります。
耳の軟骨は先程もご説明したように、大きさや量に限りがあります。なので、オレンジの軟骨部分があまりに小さいと、理想的な位置まで鼻先を押し上げるだけの十分な耳の軟骨を移植することができない可能性があります。
左右の鼻の穴に指を入れて、オレンジ色の壁の部分を触れてみてください。入り口部分が柔らかくグニャグニャと動くのに対して、ビクともしない硬い軟骨を奥に触れることができます。
これが指を奥まで入れても触れられなかったり、軟骨は触れるけどグニャグニャしていてわからない、曲がっている気がする、などがある場合は注意が必要ということになります。
セルフチェックでこのような疑いがある場合には、特に経験のあるドクターに頼んだほうが安全です。いわゆる安さを売りにしているような経験が浅いドクターでは、間違った手術プランや手術手技が起こってしまう可能性が高いと考えられます。
鼻先の皮膚の下の軟骨をしっかり触れるかどうかも大事です
鼻中隔軟骨びちゅうかくなんこつのセルフチェックに加えて、もう一つチェックしておきたいポイントがあります。
ご自分の鼻先の皮膚を触ってみてください。この時に、皮膚の下にある軟骨の形がわかるほどしっかりと軟骨を感じて触れるでしょうか?
鼻先全体が柔らかくて、耳の軟骨のような硬いフレームワークを鼻ではほとんど触れられない人も多いのではないでしょうか。こういった方は、鼻先が厚い皮膚と脂肪でできていて、軟骨は小さくて柔らかいことが多いです。
セルフチェックでしっかり触れると感じたあなたは、鼻先の軟骨がしっかりしているパターンです。糸を使った軟骨の形の調整と、耳の軟骨による高さの調整でうまく整えることが可能です。
逆に、ほとんど触れずにわからなかった人は、注意が必要です。
鼻中隔軟骨びちゅうかくなんこつそのものに調整をかける手技を加えたり、場合によっては胸から肋軟骨ろくなんこつをもらってきて、しっかりとした土台作りから始める必要があるかもしれません。
セルフチェックでうまく触れられなかった人の実際の治療パターン
それでは、実際のセルフチェックの結果によりどのように治療を検討していくのかを解説してみたいと思います。
この方は鼻の曲がり、鼻の詰まりも問題で私のところにご相談にいらっしゃいました。鼻は鼻筋が曲がっているだけでなく、左右から鼻先の形が違うという点も改善をご希望されていました。
先ほど図を使って説明した鼻中隔軟骨についてのセルフチェックでは、やや奥に鼻中隔軟骨びちゅうかくなんこつを触れている状態でした。
この図のオレンジ色の部分でしたね。この方の場合は、右図のように鼻中隔軟骨に曲がりがある状態も認められました。
次に、鼻先の軟骨を触れるセルフチェックです。はっきりとは軟骨のフレームを触れることはできませんでしたが、だいたいの形は確認することができ、なんとか耳の軟骨を使って鼻先を作ることができると判断しました。
オレンジ色の部分の軟骨が奥に触れていてかつ曲がっているので、ここの曲がっている部分を一部切除して、切除した軟骨をうまく固定し直すことで問題を解決しました。
この辺りの引き出しを多く持っていることで、今回あげたようなセルフチェックで問題がありそうな人の手術も安全にきれいに仕上げることができることになります。
そしてその分、耳の軟骨を鼻先の形作りにしっかりと使うことができるようになったことで、鼻先もすっきりと仕上がっています。今回やったことをまとめると以下のようになります。
- 鼻中隔延長により、鼻先を少し下に伸ばし鼻尖位置と鼻孔の見え方を改善しました。
- 鼻先の軟骨の形を調整して、自然にすっきりとさせました。
- 鼻骨の曲がりも同時に治療しており、この時期では腫れがまだ20%ほど残っています。
最後に、他の角度からのお写真もお出しいたします。
まとめ
鼻の手術には、変化に応じて糸だけで治療を行うこともあれば(そういったケースは稀ですが)、胸から肋軟骨ろくなんこつをとってきて土台からしっかり作り変える必要があるケースもあります。
今回説明したセルフチェックで、鼻中隔軟骨びちゅうかくなんこつが奥にあってなかなかうまく触れない人や、鼻先がとても柔らかくて軟骨を皮膚の下に感じることのできない人は、耳の軟骨だけの鼻整形手術には注意が必要です。
期待していた効果が本当にその治療だけでしっかりと得られるのかを、ドクターとしっかり相談してください。
鼻の治療のご相談にいらっしゃる方の中には、“鼻中隔延長を受けたい!”とか、“鼻翼縮小が必要だと思うんです、、、”とか、あらかじめ術式まで決めてくるすごく勉強熱心な患者さんも少なくありません。
同じ術式名でもドクターによって、やり方は全然違います。私は、患者さんと最初に写真シミュレーションで理想の形、なりたい鼻を作って共有するようにしています。
なぜなら、理想の形を作ったあとに、”どの術式を組み合わせればその鼻になるのか”を考える部分こそが治療のキモになるからです。いろんな引き出しを持った外科医に相談したいですね。
Jin HR, Won TB. Rhinoplasty in the Asian Patient. Clin Plast Surg. 2016 Jan;43(1):265-79.
Toriumi DM, Swartout B. Asian rhinoplasty. Facial Plast Surg Clin North Am. 2007 Aug;15(3):293-307,
- 患者さんの個人情報の保護のため、ご本人とのお話の内容は一部変えています。あくまで、一般的な治療の流れを理解していただくための、イメージだと考えてください。
- 治療の効果には個人差があります。主治医から十分な説明を受け、リスクや副作用についても納得してから手術を受けましょう。
<施術内容>鼻中隔延長 鼻尖形成 鼻中隔彎曲矯正術 鼻骨骨切り
<手術費用>約120〜180万円
*モニター制度の場合、減額あり
*これ以外に検査費用・麻酔費用などがかかる場合があります。
*斜鼻、鼻中隔彎曲症の場合、保険適応となる場合があります。
<リスク>術後出血、感染、キズが開く、曲がりや変形の残存、後戻り、など
- 聖路加国際病院 形成外科 毎週金曜日 初診外来 予約制
- 加藤クリニック麻布 美容外科 毎週月曜日水曜日土曜日 初診外来 予約制
- *HPトップページに予約可能なお日にちとクリニックのカレンダーを掲載しています
コメント