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団子鼻の整形手術は名医でも難しい?丸い鼻先のお直し、3つの注意点

こんばんは。東京で美容外科をしている形成外科専門医の齋藤隆文です。

すっかり桜も散ってしまい、だんだんと暖かくなってきましたね。私は春が大好きです。

なぜなら、夏が大好きだからです。実にシンプルです。これから夏にかけて暖かくなっていくことを予感させる春は、なんだか生きているだけで毎日ワクワクしてしまいます。

そんな気持ちの良い空を眺めながらこの記事を書いているんですが、やや重ための話題です。

今回はずばり、鼻を手術しないで手軽に高くしたりするのに使われる、注入治療や、手軽に形を変えられると謳(うた)われているシリコンプロテーゼなどの治療に関する注意喚起です。

この記事で解説している人工物による鼻治療のポイントは、以下の3点です。

  1. 団子鼻の上から何かを乗せたり注入するだけで細く・スッキリは困難です
  2. 鼻先に何かを乗せて高くする治療だと、鼻の穴が潰れて不自然な形になることがあります
  3. 人工物を使う治療には、アレルギーや感染のリスクがあります。使う製剤には注意が必要です。

なぜこれらがポイントになるのかを、一つずつ丁寧に解説していきますね。

また、後半では、具体的な団子鼻の治療ケースのお写真を見ながら、典型的な5つの改善点について見ていこうと思います。

目次

人工物は、とにかく正しい使い方が大事です

さて、鼻の美容治療では昔からたくさんの人工物が使われてきました。世界的に見ると、古くは1800年代前半に金や銀でできたインプラントを使っていたのが始まりと言われています。

金や銀です。もはや金属です。確かに医療現場でも安定した材料として使われる場面がありますが、さすがに今ではこんなことやるドクターはいないでしょうね。

日本ではパラフィンや象牙(ぞうげ)が1900年初頭から使われていたのが文献として残っています。私も、象牙が入っているおばあちゃまの手術は経験があります。

なかなかきれいに入っていたことに驚いた記憶があります。

さて、医療技術は進歩して、今では鼻の治療には注入剤として主にヒアルロン酸、固形のものではシリコンプロテーゼやゴアテックスなどが使われています。 これらは使い方を間違えなければ比較的安全性が確立された商品なのですが、鼻に使う場合にはいくつか注意点があります。

どんな注入剤を使っても、鼻先を細く作るのは不可能。固形でも鼻尖びせんは困難

鼻 フィラー ヒアルロン酸注射

まずは先にあげた3つのポイントの一つ目、①団子鼻の上から何かを乗せたり注入するだけで細く・スッキリは困難です、について。

鼻は、皮膚の表面から皮膚、脂肪、軟骨、という層構造で作られているのですが、この鼻先の軟骨というのは、ふわふわと脂肪の中に浮いたような状態にあります。

みなさん、ご自身の鼻先をつまんで動かして見てください。上下左右にいくらでも動きますよね?また、強く押さえつけて見てください。

鼻先が潰れて低くなることがわかるかと思います。このように、鼻先の軟骨は常に動くことができる状態にあるわけです。

まずはここで、注入治療を考えます。ヒアルロン酸を注入する場合は、ちょうど軟骨の上、脂肪の層に入れていくことになります。

そうすると、皮膚と軟骨の間のスペースに入ったヒアルロン酸は、量が増えていくと皮膚と軟骨に挟まれて行き場を失うので、横方向に広がっていこうとします。

これでは、鼻先をツンと細くしながら作っていくのは難しいことが容易に想像がつきますよね。

じゃあ、かた〜い物を入れて無理やり縦方向に高くすればいいんじゃないの?という意見が出てくるかと思います。

確かに、かたくて横に広がらない人工物を入れればその形のまま皮膚と軟骨の間に留まるので、鼻先は細く高くできそうです。

こんな発想で作られた、吸収性素材でできたオステオなんちゃらという商品なんかもあったりします。さて、実際にはどうなるのか?

先ほどもお話した通り、鼻先の軟骨は押すと沈むことができます。なので、かた〜い人工物が皮膚と軟骨の間に無理やり入れられると、軟骨は沈んで逃げようとするわけです。

これでは、かたい人工物を入れてもなかなか難しそうです。なので、軟骨が沈んで変形した状態でも高さが出せるくらい大きな人工物を入れてしまおうとするドクターがいるみたいです。

こんなことをすると、術後長期的に軟骨が変形した状態になり、軟骨が吸収されたり、皮膚の外に人工物が飛び出てきたりするリスクがあります。

また、上にあげた二つ目のリスク、②鼻先に何かを乗せて高くする治療だと、鼻の穴が潰れて不自然な形になることがあります、も同様の理由です。

鼻先を作っている軟骨は、同時に鼻の穴の形も作っています。なので、これが変形してしまうと、鼻の穴が横に広がって潰れてしまったり、左右左が強く出てしまうリスクがあります。

みなさんは、できればこんなリスクの高い治療はお受けにならないことをお勧めします。また、すでにお受けになって現在そういったリスクを心配されている方は、一度鼻を専門にしているドクターにご相談されることをお勧めします。

人工物には、アレルギーや感染のリスクがあります。使う製剤には注意が必要!

鼻 感染 イメージ

さて、3つ目は、形のトラブル以外の注意点です。

現在、世の中に出回っているヒアルロン酸は非常に質が高くなっていると思いますので、安心できるクリニックで受けていただければアレルギーのリスクは非常に低いと考えて良いと思います。

ただし、リスクがゼロでないこともまた事実です。実際に、海外のクリニックで注入治療を受けた後からしこりや腫れが出たというトラブルで私のところに受診される方がいらっしゃいます。

様々な検査を受けていただき、ステロイド治療というアレルギー反応を抑える治療を開始してなんとか症状は落ち着きましたが、通院や内服を続けるのは大きな負担があります。

私個人としては、やはり誠実な治療を提供しているクリニックでの治療を一番にご提案したいです。

なぜなら、こういったトラブルで受診される患者さんの多くが、治療を受けたクリニックに相談しても相手にしてもらえなかったり、注入した薬剤を正確に教えてもらえなかったりしているのを目の当たりにしているからです。

そういったクリニックは避けて、それでもごく稀にアレルギーが起こりうることを十分理解した上で治療を受けていただきたいと思います。

あとは、感染についてです。治療が必要になるような感染が起こるのは固形人工物のケースがほとんどです。

人工物が感染するのはなぜでしょうか。私たちの体は全身に血が通っており、この血液の中に免疫めんえき(自分の体を細菌やウイルスから守る機能の一つ)に関わる、いわゆるバリア機能を持っています。

シリコンが体の中に入ると、シリコンには血が通っていませんので、シリコンについた細菌には血液の中のバリア機能がうまく作用しません。

また、抗生剤も同じです。抗生剤(こうせいざい)を飲むと、抗生剤は血液の中に吸収されて、血流に乗って細菌が悪さをしている部分まで送られます。これも同じく、人工物には血液が流れていないのでうまく届き切らないことがあります。

ですので、人工物に付着した細菌は好き放題に増殖することができるわけです。

ただし、ただ闇雲(やみくも)に人工物を否定している訳ではありません。正しい使い方を守っている何人かの著名な先生方の報告によれば、感染率はせいぜい数パーセントです。決して高い数字ではありません。

これは手術の常ですが、”誰がその手術をしたのか”で、効果も結果も変わります。標準化は進んでいますが、それでもなお、”誰がやるのか”がとても大事です。

人工物が感染すると厄介なのは、感染治療が難しいだけでなく、放っておくと体の外に飛び出してこようとすることです。

基本的に、私たちの体は、自分以外の物質が体内に入ることを拒否しようとします。

また、L型プロテーゼのように無理やりに鼻の皮膚を引き伸ばそうとして入っていると、皮膚を中から押している部分の皮膚が薄くなることでインプラントが体から出てしまうような作用が起きます。たいていの場合、鼻先か、鼻孔の入り口近くの鼻中隔部びちゅうかくぶ(鼻の真ん中の壁)から露出することが多いです。

基本的には、感染しやすく、体から出てこようとしているようなものを、とっても薄い鼻の皮膚のすぐ下に入れようとしているわけです。どうしてもトラブルをゼロにすることができない理由がここにあります。

自分の治療プランにあった製剤の選択、使い方を担当ドクターとしっかりと相談してくださいね。

団子鼻は手術治療で自然に改善させることができます

それでは、実際の治療ケースを見ていきます。

団子鼻 正面
団子鼻 横

この方は、10年以上前にシリコンの注入治療、保存軟骨での手術など複数の治療を受けたもののなかなか思ったような形にならなかったようです。また、途中から鼻先や鼻筋が腫れるようになり私のところに受診されました。

画像検査をしてみると、鼻の皮膚と軟骨の間の脂肪の層には人工物がぎっしりと詰まっており、度重なる注入治療の黒歴史がはっきりと写し出されていました。

先ほどもお話ししたように、注入剤をただ漫然と打っているだけでは鼻の形は良くなりません。

入っている人工物をきれいに取り除き、自分の軟骨と脂肪を移植する鼻手術を計画しました。

これが術前後のお写真になります。

団子鼻治療 術前後 斜め
団子鼻治療 術前後 横

今回の手術治療のポイントは以下の4つです。

  1. 鼻根部が不自然に高く太い鼻筋を整え、細くスッキリさせました
  2. 団子鼻特有の太い鼻先は鼻中隔びちゅうかく延長術により軟骨の形を変えることで細くしています
  3. あおり写真では、鼻先が太く鼻の穴が潰れていたのを、鼻の穴を縦長に変えて鼻先を細くしています。鼻の穴と鼻先の比率が変わり、バランスが改善しています
  4. 人工物を取り除き、痛んだ皮膚の質感を改善させました。

治療については、また別の機会に詳しく解説したいと思います。

手術の前に大事にしていること

画像検査で中の構造を細かく確認します。

お顔の左右差、全体のバランスを一緒にお写真で見ながら、患者さんとその方の自覚している”曲がっている”を共有できるように努力しています。

曲がりを修正していく中で鼻の高さや長さについてももちろん変化が起きるので、ご自身が認識されているお顔の特徴・コンプレックスを確認して、手術による変化でそれらが悪い方向にいかないかを確認します。

こういったことを確認するツールとして強力な武器となるのが、写真を使ったシミュレーションです。

写真を手術に沿って修正していきながら、術後の形のイメージを事前に共有しておくことで、患者さんにも手術による変化に対する心の準備をしてもらうようにしています。

ご注意いただきたいこと
  • 患者さんの個人情報の保護のため、ご本人とのお話の内容は一部変えています。あくまで、一般的な治療の流れを理解していただくための、イメージだと考えてください。
  • 治療の効果には個人差があります。主治医から十分な説明を受け、リスクや副作用についても納得してから手術を受けましょう。

治療についてのご相談や受診のお問い合わせについては、当HPトップページの予約フォームからご連絡ください。

今回の治療内容について

<施術内容>

異物除去、鼻中隔びちゅうかく延長術、鼻尖形成術、隆鼻りゅうび術、肋軟骨・真皮脂肪採取

<鼻の手術のリスク>

術後出血、感染、傷が開く、曲がりや変形の残存、後戻り、など

<費用>

約70〜100万円

*これ以外に、検査費用・麻酔費用・入院日数により入院費用がかかることがあります。

齋藤隆文医師には下記の医療機関で受診できます。HPトップページからご予約ください。
  • 聖路加国際病院 形成外科  毎週金曜日 初診外来 予約制
  • 加藤クリニック麻布 美容外科 毎週月曜日水曜日土曜日 初診外来 予約制
  • *HPトップページに予約可能なお日にちとクリニックのカレンダーを掲載しています
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この記事を書いた人

さいとう 隆文のアバター さいとう 隆文 美容外科医

齋藤隆文 さいとうたかふみ
日本形成外科学会認定専門医
神戸大学医学部医学科 卒
聖路加国際病院形成外科美容外科、加藤クリニック麻布、タウン形成外科クリニックに所属。
専門はお顔の美容外科、特にお鼻の治療。

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